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いつまで高齢者に搾取され続けるのか


高齢者の医療費負担を巡り、首相と公明党の隔たりは大きかった(写真右は同党の山口代表)
9日夜、首相の菅義偉と公明党代表の山口那津男が都内で食事をともにした。この席が、政府・自民党と公明党の間で溝のあった高齢者医療費の見直しの問題を巡る詰めの場となった。

ここに至るまで協議はもつれた。「総理の意向は変わりません」。8日、厚生労働相の田村憲久が公明党幹部に伝えると場は静まりかえった。75歳以上の窓口負担を今の1割から2割に上げる範囲で隔たりが大きく、会合は30分もせず終わった。

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税制は菅・甘利ライン
対象を年収240万円以上とするのが公明党の案だった。政府は2日からの断続的な協議で年収170万円以上とする案を取り下げず、譲らずにきた。

8日の協議前、自民党政調会長の下村博文に官房長官の加藤勝信を通じて菅の意向が伝えられた。「一切の妥協案はない。終始170万円でお願いする」。高齢者医療費の引き上げは現役世代への負担の偏りを見直す「全世代型社会保障改革」の柱。影響が大きいだけに、歩み寄りは難しかった。

政府の170万円案は2日、菅と田村と加藤、財務相の麻生太郎の4人で決めた。厚労省がたたき台として示した年収による線引きの5案のうち対象者が2番目に多く、75歳以上の31%、520万人が該当する。

2日夜に打診を受けた公明党幹部は「とんでもない数字だ」と憤慨した。4日の予定だった政府の全世代型社会保障検討会議は流会に追い込まれた。それでも妥協しなかった菅に自民党内からも驚きの声が漏れた。

菅は4日の記者会見で「幅広く負担できる方を増やし、将来の若い世代の負担を少しでも減らしていく」と力説した。公明党の240万円案だと現役世代の負担減は約470億円にとどまる。政府案なら約1220億円で、3倍の差がでる。

団塊の世代が75歳以上になり始める22年から医療費は急膨張し、現役世代に重くのしかかる。改革は待ったなしとの思いが菅にはあった。

しかし自民党内でも不満はくすぶった。「今後、政治決戦が目白押しのなかでやるべきことか」「新型コロナウイルスの影響があるなかで受診控えが広がれば政治責任が問われる」。自民党の支持団体である日本医師会の会長、中川俊男も「負担を倍にする議論には社会保障の優しさがない」と批判した。

9日夜の自公トップ会談の帰結は両党の間の200万円。2割負担に移行するのは75歳以上の23%となる。(敬称略)